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PINOSOLAマガジン第一章 旅立つ前に立ち寄る世界
3.統合する思考過程のカタチ1
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相反する項目の統合作業をすることでどのような新しいカタチが生まれるのでしょうか。
PINOSOLA methodは「主体性と従属性を統合してどのように生まれたのかをサンプルにして一緒に考えてみましょう。
はじめに背景を仮説定義することが重要です。
経営者は営業活動について主体的でありたいと常々考えています。月初の予測と月末の実績の差にいらだっています。
プロセスの可視化が実現するSFAを導入しても月初と月末の差が縮まることはありません。
経営者は,この課題を解決する手段の一つとして営業活動を標準化できないかと考えています。
一方、営業部門は月初の予測と月末の実績の差が生じるのは仕方がないと思っています。
さらに、営業活動は千差万別だから標準化は無理だと信じています。
日本企業は、アメリカから入ってくるプラットフォーム・パッケージを、このままでは使えないと自社流に直してしまいます。
日本企業は、営業マネージャーに新入営業パーソンを付けて教育をします。
マネージャーの能力や性格などに反映して営業タイプが違う営業パーソンが生まれています。
→現状では、形式的な主体性は企業(経営者)があるものの、実際の主体性は営業部門が持っています。
命令はできるものの途中から結果に至るプロセスの主体性は営業部門が握っているからです。
一方で形式的な従属性は営業部門にあるものの、実際の従属性は企業(経営者)が負っています。
二律背反したこの哲学的な話は、日本人が個別化を追求する民族であることによって生まれたものです。
個別化を追求すると個別的な主体性に依存せざるを得ないからです。
背景の仮説定義は極めて重要な作業です。見誤ると統合できずに分裂が生じてしまいますから。
上記はざっくりとまとめてしまいましたが、背景を知ったうえで考えられる統合の仕方を説明します。
統合は相反する双方の主張を一つにまとめていく作業です。
私の思考過程でご説明いたします。一つの事例としてご理解いただければよいと思います。
他にも統合の仕方があると考えるのが普通だからです。
私の考えが唯一無二で絶対的な手法だということはありません。
そのうえに立って、私は、次のように思考を組み立てました。
個別的主体性を実現しながら、結果としての相反する双方の共通成果を実現していくこと.
それらが標準化していくような方向で統合を進めよう。
かみ砕きますと、俺流、私流をやってよろしい。あなたのやり方で成果を出してください。
ただ、それでは私はサッカーで、俺は野球で、私はラグビーでと、各人がやりたいことをやったら統率ができません。
そこで一つのルールが必要になります。
ルールには従って貰いますが、その中では個別主体性を持って自由にやってくださいというわけです。
それさえやってくれれば、あとは自由にやっていただいても、システム的に標準化をつくりますからねというわけです。
私の思考組み立ての第一ステップはこれだけです。
ですが、最終的にはシステムで実現しなければなりません。
第一ステップで分裂する概念は何か、システム的に必要な概念は何かと思考を発展させなければなりません。
これらを実現するには、営業プロセスが絶対必要になることにお気づきになると思います。
さあ、日本企業の営業部門が避けてきた営業プロセスが不可欠になってきました。
日本企業の多くが挑戦して達成できなかった営業プロセスです。
なぜできなかったかと言えば個別主体性を日本企業が推進してきたからです。
二律背反の矛盾を、どのように克服するかが統合のポイントになります。
営業パーソンの(厳密にいえばマネージャーの)個別主体性を推進しながら片方で属人的なモノを排除した
標準化を求めてきた日本企業が、デジタル営業を、そしてAI化を進めようとしていることは二律背反なのです。
この二律背反を乗り越えるには、常識にとらわれない全く新しいアプローチ手法が必要になります。
次に営業プロセスのフォーマットに話を移します。
俺流、私流に営業活動をやってよいと前述しました。
個別主体性を認めないと日本では使わなくなってしまう文化があることを認めるということです。
その代り一つのルールをつくるからルールだけは守ってくださいねとも前述しました。
これは個別主体性と標準化、つまり標準化への従属性を統合するということです。
統合する接着剤は、個別性を凌駕する営業プロセスフォーマットを見つけることで解決できると判断したのです。
言い換えれば千差万別な個別主体的な営業活動であっても、一つの営業プロセスで事足りる万能性ある
営業プロセス構造を発見することで統合するしかないと判断したのです。
すると、一つの営業プロセスは永遠に使えるものではないとする分裂が生まれました。
優れている製品であっても、競合製品が同一機能以上の機能をつくれば今までの勝ち続けていた営業プロセスでは
負けてしまいます。
常にベタープラクティスプロセスを発見できる仕組みにしないと、デジタルマーケティングシステムを組み上げても、
すぐに使えないデジタルマーケティングになってしまいます。これは深刻なな分裂です。さあどうしたらよいのでしょうか。
次号では「統合したカタチ2」について説明をいたします。
(本文2047字 次号へ続く)